| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P1-231

水田環境と周辺の景観構造がカエル類の卵・幼生・幼体に与える影響

*加藤倫之,吉尾政信,宮下直(東大・農・生物多様性)

水田を利用する両生類は、水田とその周辺の林地とで構成される複合生態系に依存していると考えられる。近年、両生類の減少要因として陸上生息地の分断化が指摘されており、保全を考える上では陸域の影響を理解することが求められている。しかし、水田周辺の陸域の景観構造が両生類に与える影響を示した研究は少ない。本研究では、水田を産卵場所に利用するカエル類3種(ヤマアカガエル、モリアオガエル、ニホンアマガエル)を対象に、水田における卵・幼生・幼体の在・不在や個体数を水田の局所環境と周辺の景観構造で説明する統計モデルを構築し、局所環境と周辺景観構造の影響を調べた。局所環境としては水田の水深や畦の草丈などを用い、景観構造には森林被覆などを用いた。景観構造が影響する空間スケールが明らかでないため、GIS上で半径200m〜1200mのバッファを200m間隔で調査水田から発生させ、各バッファから景観要素を抽出し、最も説明力の高いモデルをAICを基準に選択した。

解析の結果、ヤマアカガエルとモリアオガエルでは、それぞれ半径1000mと600m内の景観要素を含むモデルが説明力が最も高く、水田の水深といった局所環境に加え、周辺の森林被覆の影響が示された。一方、ニホンアマガエルでは水田の局所環境の影響は示されたが、森林被覆の影響は検出されず、バッファサイズの影響はほとんどみられなかった。以上の結果から、生息に影響する景観構造とそのスケールが種間で異なることが示唆された。

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