| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P1-261

絶滅危惧植物シラタマホシクサの保全に関する研究

*長谷川万純(静岡大学),岩井貴彦(名古屋工業大学),増田理子(名古屋工業大学)

多くの湿原には,湿原に特有の植物が生育している.特に周伊勢湾地域の特異な二次林や湿地には,東海丘陵要素と呼ばれる15種の植物が生育している.

東海丘陵要素には,さまざまな生活史を持つ希少な木本類や草本類が含まれているが,周伊勢湾地域のみに生育する一年生草本,シラタマホシクサがある.シラタマホシクサは群生するため,概して個体数の少ない東海丘陵地であっても,一地点での自生個体数の点から見れば決して少なくない.ところが,水条件や被陰などの環境変化に敏感な点,産する湿地に地理的なばらつきがあるため特定の小湿地の絶滅が地域集団そのものの絶滅となるなど,一旦自生地数が減少すれば,絶滅を加速させる要因は多い.そのため,国のレッドデータブックでは「絶滅危惧II類」に指定されている.しかし,多くの自然保護団体が保護をしているが減少をなかなか食い止めることができない.

そこで本研究では,第一に,その地域での個体の生存数に影響する発芽特性,第二に生活史特性を調査調査することによって,絶滅を食い止めるための基本情報の調査を行った.また,第三に遺伝的多様性を把握することによって,個体群の基礎情報とし,遺伝的多様性の減少がこの種の減少につながっているのかどうかについて検討を行った.

調査地点は愛知県,静岡県の10カ所で行った.その結果,各集団の発芽特性,生活史特性には地域ごとにかなりの分化が認められ,また,遺伝的多様性はかなり高かったものの,集団ごとに分化していることが示唆された.

日本生態学会