| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P1-271

山村における獣害防止のための里山バッファゾーン整備のフレームワーク

*山場淳史(広島総研林技セ),兼子伸吾(広島大・院・国際協力)

過疎化・高齢化の進行している山村においては,イノシシやサルなどの野生動物による農作物の被害(ここでは獣害とする)が深刻な問題となっている。獣害を未然に防止するための環境整備手法として,最近国内のいくつかの地域では「バッファゾーン」として里山の林縁部から耕作放棄地を含む農地にかけて疎林・草地空間を整備する事業が展開されている。

本報では,広島県北広島町溝口地区におけるイノシシ獣害防止のためのバッファゾーン整備事業(森林ボランティア団体「ひろしま人と樹の会」および地元自治組織「美和東ふるさと振興協議会」共催;2007年度日本財団助成)に関わる過程で,整備のための制度的・技術的課題を主に次の視点から整理した。(1)山村におけるバッファゾーン整備事業の制度的背景と問題点の検討。(2)バッファゾーン整備作業の多面的評価と技術的課題;特に従前の草刈などの維持管理方法を草本植物種の生活様式ならびに野生動物の獣害パターンとの関連で評価することによる,作業時期・内容・効果の組み合わせの検討。

以上の検討により,例えば年間数回にわたり林縁や畦を刈払いする人が多い現状に対し,アマナやイチリンソウなどの春植物については盆過ぎ,ヒゴタイやオミナエシなどの夏植物(いわゆる盆花)については晩秋から春先にかけて草刈を行うのが生息地の環境整備としては効果的であり,他方獣害防止の観点からは盆過ぎの草刈は逆効果になる可能性もあるなど,依拠する視点による効果の有無の組み合わせを整理した。持続的なバッファゾーン整備のための合意形成や取組みを支えるためには,こうした検討を踏まえて,各地域の特性や意向に応じたフレームワークの明確な提示と共有が重要である。

日本生態学会