| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P1-298

富士川におけるカワラサイコの集団サイズと種子生産

*岩田卓也,山下雅幸,澤田均(静岡大・農)

近年、河原固有植物の集団数および集団サイズは生育地の減少・悪化、外来植物の侵入などによって減少している。多くの河原固有植物で集団の孤立化、小集団化が進行している。小集団化は、さまざまなプロセスを経て、地域集団の絶滅をもたらす恐れがある。そのプロセスの1つは、繁殖成功の低下である。そこで本研究ではバラ科多年草カワラサイコ(Potentilla chinensis Ser.)の集団サイズと繁殖成功の関係を調べた。カワラサイコは静岡県版RDB部会注目種の1つである。調査1では富士川の河原において集団サイズと種子生産の関係を調べた。調査2では富士川から採取した種子を発芽させ、ポット栽培したカワラサイコ個体を用いて花粉親の数と種子生産の関係を調べた。調査1では14集団について集団サイズ(開花個体数)を調べ、結実が始まる8月から9月にかけて各集団から果実30個を回収し、果実内種子数を調べた。調査2では7月上旬に種子親7個体の枝にそれぞれ5処理(自殖区、放任区、花粉親数が異なる3つの花粉添加区)を割り付けた。主な結果は次のとおりである。調査1では果実内種子数に有意な集団間差があり、極小集団で少なかった。10個体未満の極小集団では2.4〜12.8個、10以上100個体未満の小集団では13.6〜21.9個、100個体以上の中〜大集団では10.2〜25.3個であった。調査2では花粉親数の減少にともない果実内種子数も減少した。花粉親1個体による授粉では平均11.9個、花粉親3個体では18.0個、花粉親6個体では17.7個であった。一方、自殖区では2.5個と著しく少なかった。以上より、富士川のカワラサイコでは小集団化によって繁殖成功が低下していることが確認された。

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