| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P2-006

送粉者間の相互作用が植物の種子生産に与える影響

*堂囿いくみ,国武陽子(国立環境研),横山潤(山形大・理),五箇公一(国立環境研)

野生化したセイヨウオオマルハナバチが,在来植物エゾエンゴサク(ケシ科)の繁殖成功に与える影響を明らかにすることを目的とした.セイヨウオオマルハナバチの野生化が確認されている北海道沙流郡平取町周辺の3集団5パッチにおいて,1)エゾエンゴサクの送粉昆虫であるマルハナバチ3種(エゾコマルマルハナバチ・エゾオオマルハナバチ・セイヨウオオマルハナバチ)の訪花頻度,2)マルハナバチの一回訪花による結果率・結実率,3)開花期間中の盗蜜痕率の変化(花序あたりの盗蜜された花の割合),4)盗蜜痕率とエゾコマルの訪花行動の関係,5)自然受粉と強制他家受粉による結果率・結実率を調査した.

在来種エゾコマルは適法訪花,在来種エゾオオマルと外来種セイヨウオオマルは盗蜜訪花であった.適法訪花のエゾコマルは,盗蜜送粉者より送粉効率がよかった.3つのパッチでは盗蜜痕率が徐々に増加しており,セイヨウオオマルの盗蜜訪花が影響していると考えられる.また,これら3つのパッチでは,マルハナバチ3種の訪花頻度が高かったにもかかわらず,強制他家受粉よりも自然受粉による結果率・結実率が低く,花粉制限が認められた.エゾエンゴサク花序内の盗蜜痕率が高くなると,エゾコマルの花序内訪花数が減少したことから,盗蜜はエゾコマルの訪花を邪魔し,結果として結果率(果実数/花数)が減少したと考えられる.さらに,結実率(種子数/胚珠数)の減少は,エゾコマルの送粉の質が低下したことを示唆し,おそらく花あたりの滞在時間が減少したためではないかと考えられる.セイヨウオオマルハナバチの侵入は,在来の植物とマルハナバチの関係を変化させるかもしれず,セイヨウオオマルハナバチの送粉効率は低いけれども,エゾエンゴサクと新しい関係が築かれるかもしれない.

日本生態学会