| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P2-061

ウェーブフォームLiDARによる植生観測の有効性について

武田知己(国立環境研究所),米康充(島根大),北田勝紀(中日本航空(株))

航空機に搭載されたレーザセンサ(LiDAR)を用いた森林樹高の広域・面的な計測が一般化している。LiDARとはレーザ距離計の一種であり、森林観測においては樹冠部分と地盤高の距離をレーザパルスの反射時間に基づき測定する。近年、地表対象からのレーザ反射時間に加え、連続した反射波形を記録するタイプのLiDAR(Waveform LiDAR)が開発されており、反射波形の解析により森林樹高の把握のみならず草本植生などへの応用が期待されている。本研究では、湿原や河川敷に生育するヨシ等の草本植生に着目し、草丈の面的な把握におけるLiDARの有効性を確認するための航空機実験と現地調査を行った。対象地として名古屋市庄内川の河川敷のヨシ密生地を選定し、中日本航空(株)のWaveform LiDARによる観測飛行を2007年11月2日に実施した。取得データはTERRASCAN(Terrasolid社)によりフィルタリング処理の後、群落の表面高と地盤高を求め、両者の差分から草丈を推定した。現地調査は同16日に実施した。対象地のヨシは一部枯れている状態であった。代表的な3地点を選定し、草丈(葉の最頂端)と葉群密度の垂直分布の測定を行った。葉群密度の垂直分布の測定は、光量子計(LI-190, Li-Cor)を高さ方向に50cm間隔で移動し高さ別の光量子量を測定することで求めた。地上測定はGPSを用いて位置を特定しLiDARによる草丈推定値と比較した。その結果、LiDARで推定した草丈は現地で測定した草丈の違いを再現できている事が分かった。一方で、LiDARによる草丈は葉の最頂端よりも低く推定されており、葉群密度の垂直分布と関係していることが推察された。

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