| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P2-072

ブナ二次林における林縁の光傾度とブナ実生の成長特性

*山田いずみ(新潟大・院・自然科学),紙谷智彦(新潟大・院・自然科学)

林縁の明瞭な光傾度は植物の更新や成長に影響を与える。そのため、前生更新した閉鎖林冠下のブナ稚樹は、林縁から林内に入るとともにサイズが小さくなる傾向が見られる。林縁の光傾度は林縁からの距離だけでなく林縁が開いた方位の影響を強く受けるために、稚樹の成長にその効果が反映されると考えられる。本研究は、ブナ林における方位の異なる林縁からの距離の違いが、光環境とブナ稚樹の成長に及ぼす影響を明らかにする。

調査地は新潟県魚沼市のブナ二次林である.東・西・南・北それぞれに面する4つの林縁に調査区を設定し、林縁から林内に向かっておよそ30m以内で2年生のブナの実生355本を掘り取り、幹長、根・幹の乾燥重量を計測した。解析には幹長(cm)とT/R率(幹重/根重)の値を用いた。光傾度は、各調査区において林縁からの距離が異なる6〜18ヵ所で全天空写真を撮影し、成長期間のrPPFDを算出した。

北向きの林縁の稚樹は、幹長の平均値が他の3方位に比べて有意に高く、値の低い東と南向きの間では差がなかった。T/R率は南向きで有意に最低となり、北向きでは比較的高かった。また、林縁から5m付近までは西向きで幹長が高く、東・南向きでは低かったが、さらに林縁から離れると東・西・南向きでは差は小さくなった。これに対して北向きは、林縁から離れた林内でも幹長の低下は見られなかった。これらのことから、直達光の乏しい北向きの林縁では伸長成長は良いものの、逆に根の発達が抑えられていることが明らかになるなど、林縁の開空方位の効果が明らかになった。

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