| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P2-075

伊豆天城山ブナ・ヒメシャラ林における樹木の空間構造

畑尚子,内山憲太郎,井出雄二(東大・農・森圏管理)

太平洋側のブナ林は、日本海側のブナ林と種組成、森林構造などが異なることが知られており、太平洋側ブナ林に特徴的な種として、ヒメシャラがある。しかし、ブナ林におけるヒメシャラの個体群動態は明らかにされていない。伊豆半島天城山系のブナ林は、太平洋側では数少ない大規模なブナ林であるが、ヒメシャラが高木層において高頻度でブナと混交している。このブナ林においてブナとヒメシャラの混交状態を明らかにするため空間構造を解析した。

天城山八丁池付近(標高約1,100m)にて1.5haのプロットを設置した。調査地は傾斜約14°の斜面である。DBH5cm以上の樹木を対象に、樹種、DBH、階層を調査し、位置図を作成した。また、出現種の分布様式を把握するため樹種ごとにL関数(Ripley1976)を、種間の分布相関を見るため主要な樹種間のω指数(Iwao1977)を計算した。

その結果、優占度の高いブナ(55%BA)、ヒメシャラ(9%)、シデ類(9%)を含む計28種が観察された。樹木位置図より、調査地における両種の分布は均一ではなく、プロット東側ではブナの生育密度が高く、プロット西側はヒメシャラの生育密度が高いことが読み取れた。L関数の計算結果より、ブナ、ヒメシャラともに分布が調査地の限られた場所に偏っていることを示す曲線を示した。ω指数の計算結果より、ブナとヒメシャラの分布は負の相関があることが分かった。また、ブナは低木種であるアセビのみと正の相関を示したのに対し、ヒメシャラはシデ、アブラチャン、マメザクラなど複数の高木種、低木種と正の相関を示した。調査地においては、ブナとアセビの主に生育する林分と、ヒメシャラを始めとする複数の高木種、低木種の生育する林分が排他的に存在していると考えられた。これらの林分の構造をさらに詳しく分析、比較するため、DBH、階層を考慮した空間構造の解析を行った。

日本生態学会