| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P2-077

オオシラビソ-コメツガ-ダケカンバ林における森林構造とその更新動態

*池田圭吾(信大院・工),井田秀行(信大・教),高橋耕一(信大・理)

【はじめに】樹木の更新初期段階である実生期は林床の影響を受けやすく,林床条件によって生存率が大きく変化する.また,実生生存に適した林床条件は種ごとに異なっている.生活史の中で実生期が最も死亡率が高い時期であるため,樹木の更新動態を探る上で実生調査は重要である.そこで本研究では,オオシラビソ−コメツガ−ダケカンバ林において,実生の分布と林床条件との関係から,3種の更新動態を明らかにする.

【調査内容】本調査は長野県志賀高原のオオシラビソ−コメツガ−ダケカンバ混交林で行った.そこに100m×100mの調査区を設置し,胸高直径5cm以上の個体について,種同定,胸高周囲長の測定を行った.さらに1m×2mの実生区を20箇所設置し,実生調査を行った.

【結果・考察】胸高直径の頻度分布はオオシラビソがL字型であったのに対して,コメツガ・ダケカンバはそれぞれ二山型・一山型を示した.このことから,オオシラビソが安定した更新,コメツガ・ダケカンバが不連続的な更新をしていることが分かった.オオシラビソはササの被度が薄く,傾斜が比較的緩やかなところに分布する傾向がみられた.

観察された実生の殆どはオオシラビソであった.ダケカンバの実生は全く確認できなかった.林床条件との関係を分析した結果,オオシラビソとコメツガの実生はササの多いところには分布しておらず,株・倒木などのササからの被陰を避けられる様な場所に多く分布していた.オオシラビソはササが少なければ地表面でも定着していたが,コメツガの殆どは株・倒木上に集中していた.これらの結果から,林床条件や攪乱の影響を強く受けていることが示唆された.

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