| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P2-090

蒜山地域における二次林の動態

*長谷川誠(鳥取大・院・農),佐野淳之(鳥取大・農・FSC)

二次林の構造には社会的背景が関っているといわれている。本研究は火入れ地の変遷と社会的背景の関連性を明らかにすること、および火入れ跡地の二次林の動態を明らかにすることを目的とする。調査地は岡山県真庭市蒜山地域である。火入れの変遷明らかにするためにGISを使って1940年代の火入れ地図および1997年の土地利用図を作成した。火入れ跡地の多くは広葉樹林や針葉樹林に変化した。約60年の間に火入れ地面積が減少した原因は、1950年代ごろより導入された耕耘機と化学肥料の普及によって火入れの必要性が低下したためと考えられる。広葉樹林に変化した土地に異なる林齢ごとに調査プロットを設置して毎木調査を行った。すべてのプロットでコナラのBA本数優占度が高い値を示し、コナラを主体とする森林が成立していた。林齢が高くなるにしたがって、種数が増加して多様性が増加した。火入れのような環境下では少数の種が優占するが、時間の経過にともなって種多様性が増加していくと考えられる。優占度の高かったコナラとリョウブは、林齢が高くなるにしたがって優占度が減少した。またコナラとリョウブは萌芽しやすい樹木であることから、2種の萌芽率と枯死率に着目すると、コナラの萌芽率は増加傾向を示した。コナラは萌芽幹枯死率よりも単幹枯死率の割合が高かったため、コナラは萌芽率を高めることによって生存率を高めていると考えられる。一方、リョウブについては萌芽幹枯死率が増加傾向を示したことから、個体内の萌芽幹どうしの競争によって自己間引きが生じている可能性がある。またリョウブの単幹枯死率が低いことから、林齢が高くなるにしたがって、単幹として生存率を高めていると考えられる。したがって、コナラは萌芽率を高めることにより、リョウブは萌芽率を減少させることによって個体を維持していくと考えられる。

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