| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P2-133

食物資源をめぐるノウサギとニホンジカの種間関係について

*木村太一,小金澤正昭(宇大・農)

ニホンジカ(以下 シカ)の影響で森林生態系に様々な影響が及んでいる。シカと森林生態系との関係の解明には、他種との種間関係を検討する事も必要であるが、研究例は少ない。本研究では、食物資源をめぐり、競争関係にある可能性が考えられるノウサギとシカについて、両種の種間関係を考察した。

調査地は、栃木県北部の湯西川、奥日光大平、ミツモチ山の3地点である。2007年冬期にスノートラッキングを行い、足跡本数を生息数指数とした。冬期の食物資源量を推定するために、融雪後各調査地に1m×1mのプロットを5個設定し、最大積雪面からの高さ0〜180cmの範囲を30cmごとの階層に区切り、階層ごとに当年枝数と乾燥重量の測定をした。このとき、階層ごとにノウサギおよびシカの食痕がある当年枝数を測定し、各階層の採食率を当年枝100本あたりのbite数として算出した。

スノートラッキング調査の結果、ミツモチではノウサギとシカが共存し、湯西川と大平では、ノウサギとシカが異所的に生息しており、生息数指数に有意差はみとめられなかった。食物資源量は、0-180cmの範囲では、ミツモチ>湯西川≒大平という傾向であり、特に大平ではノウサギが利用可能な0-90cmの食物資源量が乏しかった。また、ノウサギとシカが共存するミツモチでは、餌植物と採食高で重複がみとめられた。

食物資源が乏しい環境では、シカは生息するが、ノウサギは生息しない。しかし、積雪によりシカが生息しない環境では、食物資源量が乏しい環境でもノウサギが生息する。また、食物資源が豊富なミツモチでは、食性・採食高が重複しているにも関わらず、両種が共存する。これらのことから、両種の間には食物資源をめぐり、種間競争が働いている可能性が示唆され、両種の共存を支える要因として、食物資源量の豊富さが関係していると考えられる。本発表では、さらに2008年の調査結果を解析に加え、考察する。

日本生態学会