| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P2-138

由良川中流域の魚類の微生息場所利用

*中川光(京大院・理)

餌資源量や水温,流量といった環境要因が季節的に大きく変化する温帯河川中流域では,魚類のニッチ分割のパターンも季節的に変化することが予想され,群集構成種の共存に重要な影響を与えている可能性がある.しかし,これまでの河川性魚類のニッチ分割に関する研究は,ある時間断面に対するものが多い.そこで本研究では,河川性魚類の微生息場所利用の年間を通した継続的な調査から,空間ニッチの分割パターンの季節変化を明らかにすることを目的とした.

2007年の6‐12月にかけて,京都府美山町,京大芦生研究林内の由良川中流域において,月2回,合計13回,昼夜1回ずつ,シュノーケリングによる魚類の微生息場所利用調査と各種環境要因の測定を行った.その結果,魚類15種および爬虫両生類4種の,のべ8011個体が観察され,種間の空間ニッチ分割のパターンには季節変化が観察された.全体としてみると,ニッチ分割は昼夜とも7‐8月にかけて多くの種間でみとめられ,9月以降はほとんどみられなくなった.季節変化の傾向は種間によって異なり,例えば,6‐8月の昼間,タカハヤは岸近くの限られた範囲にのみ分布し,他種との間で顕著なニッチ分割がみられた.また,多くの魚種間で8月にニッチを分割する傾向が強まるのに対し,ウグイとカワムツの間ではそれとは逆の傾向がみとめられた.夜行性魚であるカジカとアカザの間では,ほとんどの季節でニッチの分割はみられず,むしろウグイ,カワムツ等の遊泳魚との間でニッチが分割される傾向にあった.

こうした各魚種間のニッチ分割の季節変化には,各種環境要因のほか,餌資源等,様々な要因が想定される.そうした要因との関連を明らかにするとともに,ある季節に生じるニッチ分割が多種共存や各魚種の成長・個体群動態等に与える影響を検証する必要がある.

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