| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P2-141

琵琶湖 内湖内・間でみられる環境特性と貝類群集の関係

*合田幸子, 柴田淳也, 大石麻美子, 山口真奈, 奥田昇(京都大・生態研センター)

植物プランクトン等の浮遊縣濁物を濾過摂餌する二枚貝類や、付着藻類や堆積有機物を摂餌する巻貝類は、湖沼底生動物群集の主要な構成員として水質浄化などの重要な生態系機能を担っている。その一方で、移動能力に乏しい貝類は環境変化の影響を受けやすく、近年、生息場所の改変や富栄養化等による底質環境の悪化によって生息域の縮小や個体群密度の減少が懸念されている。また、イシガイ類のように初期生活史に底生魚類に寄生することによって分散する習性を持つ種の保全を考える際には、湖沼の内部環境だけでなく、魚類の湖沼間移動を促進するコリドーの存在も不可欠である。貝類群集の多様性と生態系機能を保全するには、湖沼内部の局所的な生息環境とそれら湖沼間のネットワーク構造が貝類群集に及ぼす影響を理解しなければならない。琵琶湖周縁部に点在する内湖と呼ばれる小規模で浅い衛星湖沼群は、水路を通して琵琶湖と接続することによって、巨大な湖沼ネットワークを形成する。また、内湖は集水域から流入する物質の沈殿池の役割を担っており、潜在的に富栄養化しやすい環境にある。さらに、浚渫や水路・湖岸工事等の人為的撹乱の影響を大きく受ける。本研究では、内湖の生息環境とネットワーク構造が貝類群集に及ぼす影響を明らかにすることを目的として、2つの異なるスケールから生息分布調査を行った。1)1つの内湖に14箇所の調査地点を設けて、各種貝類の微生息環境に対する選好性を解析した。2)23内湖において網羅的調査を実施し、各内湖の環境特性およびネットワーク構造と貝類群集の関係を解析した。解析結果に基づき、集水域の土地利用による生息環境改変とネットワーク構造の物理的改変が貝類群集に与える影響について考察したい。

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