| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P2-146

河道特性の異なる谷間における生息場構造と底生動物群集の比較−攪乱前後の違いについて−

竹門康弘(京都大学防災研究所),宝馨(京都大学防災研究所),堤大三(京都大学防災研究所)

岐阜県蒲田川源流域では、山地の地質構造や地形の違いによって土砂崩壊が頻繁に起こる流域と湧水起源の安定した渓流が混在している。また、足洗谷支流のヒル谷には穂高砂防観測所所有の排砂施設を有する砂防堰堤がある。本研究ではこのような地形と設備を利用し、山地渓流における土砂流出量や出方の違いが、瀬-淵構造や微生息場の種類と配置に及ぼす影響を明らかにすることを目的とした。

調査は(a)右俣ネボリ谷最下流部の湧水河道(砂のみが動く安定した谷)、(b)ヒル谷砂防堰堤上流(融雪期以降の増水時に自然に土砂供給が起こる谷)、(c)ヒル谷砂防堰堤下流(夏季から秋に行われる排砂によって砂防堰堤から一気に土砂が出る谷)、 (d) 割谷(土砂が動く荒れた谷)、(e)外ヶ谷(極度に土砂が動き非常に荒れた谷)の5つの谷において、2007年の排砂が行われる前後(5月、6月)、台風の前後(8月、9月)、本調査を11月下旬に行った。瀬-淵構造については小滝・早瀬・平瀬・淵の長さと幅を記録し、微生息場構造については微生息場要素の有無を流心・沿岸、小滝・早瀬・平瀬・淵で分けて記録した。底生動物群集はそれぞれの区間で基盤岩、礫底、砂利・砂の3地点で25×25cmの枠内を定量採集した。

その結果、瀬-淵構造は右俣ネボリ谷では平瀬と淵が長く、他の谷と異なっていた。また土砂が動きやすく荒れる谷ほど平瀬の出現率が小さいことがわかった。微生息場構造の出現率については、苔マットが(a)>(b)>(c)>(d)>(e)、浮石が(a)<(b)<(c)<(d)<(e)、流倒木が(d) >(a)≒(b)≒(c)>(e)であった。底生動物群集についてはヒル谷の方が右俣ネボリ谷よりも多様性が高いことがわかっている。本研究では各谷について底生動物群集の多様性と瀬-淵構造や微生息場構造の関係を分析する。

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