| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P2-156

森林ギャップがコウモリ群集におよぼす影響

*福井大, 平川浩文(森林総研・北海道),村上正志,平尾聡秀(北大・苫小牧研究林)

森林性の食虫性コウモリ類は,同所的に多くの種が生息し,森林の様々な空間を利用している.それぞれの種がどのような物理構造を持つ空間を利用するかについては,飛翔能力と空間把握能力が大きく影響すると考えられるが,これらの能力は,翼の形態とエコロケーションコール(音声)の構造によって理論的にある程度予測できる.したがって,翼と音声の構造がコウモリ類の採餌場所選択を決定する要因になると同時に,森林の空間構造がコウモリの活動に大きく影響をおよぼすと予測される.

これまでのコウモリの飛翔空間に関する実証研究は,1種あるいは2種のみを対象としており,手法的制約のためにコウモリ群集全体を対象とはしていなかった.本研究では,森林の空間構造の異質性として自然攪乱によって生じたギャップを扱い,その大きさの違いに対する生息コウモリ種の応答を,全ての種について明らかにし,翼・音声構造と飛翔空間の関連性について検証することを目的とした.

その結果,ギャップサイズに対する反応は大きく以下の3つのパターンに分けることが出来た.1:ギャップサイズと利用頻度に明確な関係が見られない種.2:中程度のギャップサイズで利用頻度が高い種.3:ギャップサイズが大きくなると利用頻度が低下する種.本研究の結果は,生息空間の物理構造がコウモリの採餌場所を決定し,局所的な種組成を決定する重要な要因であることを実証すると同時に,コウモリ類の特徴である翼と音声の構造が,コウモリ群集の空間分布を決定する主要因であることを示唆する.

日本生態学会