| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P2-157

堆肥・窒素化学肥料の投入が水田の双翅目昆虫の発生に及ぼす影響

森本信生(中央農研)

水田における生物群集を決定する要因として、化学肥料や有機堆肥の投入量は重要である。しかし、これまで、同一の圃場で肥料類の投入量を操作し、害虫や天敵以外の双翅目のユスリカなどの「ただの虫」を含めた節足動物の発生量を比較した事例はほとんどみられない。

そこで茨城県谷和原の水田において、肥料の投入量が、節足動物の発生数に及ぼす影響を2006年と2007年に調査した。すなわち、約30アールの水田を分割し、窒素化学肥料量を3段階(窒素量換算0、12kg、24kg/10a)(ただし2007年は24kg区は設定せず)、牛糞おが屑堆肥量を3段階(0、2、6t/10a)とする組み合わせで、9区または6区の肥料類の投入量が異なる調査区を設定した。そして、羽化トラップ、すくい取り調査を併用し節足動物の発生量を比較した。

ユスリカを中心とした双翅目長角亜目(カ亜目)は、田植え直後に多数発生し、化成肥料を投入しない場合、堆肥の量が多い区で個体数が多い傾向を示した。長角亜目は、日にちが経過するにしたがって急速に減少したのに対し、短角亜目(ハエ亜目)は、田植え直後は、羽化トラップでは全く捕獲することができないが、中干しの直後に多く見られるようになった。2006年9月上旬のすくい取り調査では、堆肥より化学肥料により大きな影響をうける分類群が多かった。すなわち、カ亜目(大部分がユスリカ類)・ハエ亜目・膜翅目は、窒素肥料が多い区で、アザミウマ目・異翅亜目・同翅亜目・クモ類は窒素肥料が少ない区で有意に発生個体数が多かった。また、膜翅目・短角亜目は堆肥が多い区で、トンボ目は堆肥が少ない区で有意に発生個体数が多くみられた。しかし、2007年はツマグロヨコバイやトンボの発生量は施肥条件の違いは明瞭ではなかった。

日本生態学会