| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P2-179

沖縄諸島におけるオリイオオコウモリの分布と島嶼間移動

*中本敦,板部真一,佐藤亜希子(琉大・理),金城和三(沖国大・法),伊澤雅子(琉大・理)

オリイオオコウモリPteropus dasymallus inopinatusは琉球列島から台湾にかけて分布するクビワオオコウモリの5亜種の内、沖縄島とその周辺島嶼に生息する亜種である。本研究は、1)沖縄諸島内でのオオコウモリの分布と生息密度を決定する要因と、2)島嶼間の移動を引き起こす要因を明らかにすることを目的として行った。

分布調査は2005年8月〜2006年5月に沖縄諸島の25島でそれぞれ1-2回行い、食痕量と直接観察から生息数を推定した。島嶼間移動に関する調査は2006年6月から2007年1月に沖縄島中部の東海岸に位置する島嶼群を対象に、月に1度行なった。夜間のルートセンサスによって個体数を記録し、同時に各島の季節的な餌量の変化を4種の主要な餌植物について評価した。

25島中19島でオオコウモリの生息が確認され、その中には伊平屋島、伊是名島、阿嘉島などこれまでに生息が知られていなかった島も含まれた。各島の生息数は主要な生息地である沖縄島からの距離の増加にともなって減少した。特に30 km以上離れた島には生息していなかった。島間の距離が5.5 km以内の場合、生息密度は非常に高い島から低い島まで様々であった。また、1回目と2回目の調査で目撃個体数が大きく異なる島も見られた。これらのことから周辺島嶼域の個体群の動向は沖縄島からの距離に依存した移出入量によって左右されていると考えられた。島嶼間移動に関する調査において、各島の個体数の変動パターンは、基本的には各島の餌量の変動とよく一致していた。さらに島嶼間の距離と地理的な配置から、島嶼間の移動量を算出したところ、沖縄島に近い島嶼群においてはより餌量の変動に敏感であり、逆に地理的により隔離された島嶼においては、餌の変動の影響が弱く、分集団としてその個体数は安定する傾向が見られた。

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