| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P2-189

溝付き付着板を用いたシマトビケラ類の付着調査−溝の太さとシマトビケラ類の巣のサイズ−

*藤永愛(電中研), 山崎孝史(日本海洋生物研究所), 坂口勇(電中研)

これまで水路壁面のシマトビケラ類の調査は,抜水時に水路内に入って行われてきた。しかし,抜水の時期は運用で決められるため調査時期を選定することは困難であり,年に1,2回しか機会がない場合も多い。付着板が流されないよう水路内に設置できる設備を利用し,シマトビケラ類付着防止対策の効果を調べた事例はあるが,付着板を用いた定期的な付着数の調査はほとんどない。そこで本研究では,付着板調査からシマトビケラ類付着数の季節変化および付着板の溝の太さによる巣のサイズ別採集について検討した。

付着板には200×200×5mmの塩化ビニル製の板を用いた。この表面に,(1) 溝なし,(2)幅1mm深さ1mmの溝付(溝は5mm間隔で全面に刻んだ,以下同),(3)幅3mm深さ2mmの溝付,(4)幅5mm深さ2mmの溝付,の4種の処理を行い,溝が流れに垂直になる向きで水路内に設置した。1ヶ月後に取り出し,付着しているシマトビケラ類の巣の数とサイズを比較した。(1)の表面が平滑な付着板には,調査期間中を通じて巣の付着はなかった。(2)〜(4)の板では夏に多数の付着が見られ,(2),(3)よりも(4)の付着数が多い傾向が見られた。付着する巣のサイズ構成には顕著な差は見られず,溝が細い(2),(3)にも大きなサイズの巣が多数付着した。

調査の結果より,塩化ビニル板に溝を刻んだ付着板がシマトビケラ類の付着調査に有効であることが確認された。しかし,溝の太さを変えることにより異なるサイズの巣を選択的に付着させることはできなかった。今回用いた付着板の中では(4)が最も付着数が多く,かつ広範なサイズの巣が付着しており,調査に用いる付着板として適当であると考えられた。

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