| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P2-209

アシナガキアリの系統地理

*田中涼子(北大・環境科学),平田真規(北大・環境科学),菊池友則(琉大・農),東典子(北大・水産),緒方一夫(九大・農),東正剛(北大・環境科学)

アシナガキアリは主に熱帯・亜熱帯に生息しており、人間活動によって分布を広げる放浪種である。放浪種は侵入地域でスーパーコロニーを形成する特徴を持ち、生態系に様々な影響を及ぼす。本種もその例外ではなく、これまでにインド洋のクリスマス島やセイシェル島で爬虫類や鳥類の生息を妨害していることが報告されている。

以上のような例があることから、環境省は本種を「特定外来生物」に指定しようとしたが、日本の南西諸島では被害の報告がないため、生態や分布拡大に関する調査・研究から慎重に判断されることとなった。生態系撹乱をもたらす要因として、1)環境(生態系)が異なる、2)系統が異なるなどが考えられる。本研究では、2)の可能性を明らかにする為、世界のアシナガキアリが遺伝的にいくつかのグループに分かれるかを確認した。

サンプリングは南西諸島、クリスマス島、セイシェル島、東南アジアなどの計22地点で行い、解析にはワーカーを使用した。マイクロサテライトDNA(SSR)8遺伝子座の多型解析およびミトコンドリアDNA(mtDNA)のCO I領域とCytb領域のシークエンスを行った。主な結果は以下の通りである。

1)SSR解析の結果より、グループ1(カリマンタン、ジャワ、オーストラリア)、グループ2(西表、久米、石垣、奄美、南大東)、グループ3(沖縄、宮古)、グループ4(インドの2個体群)に分かれることが示唆された。

2)mtDNA解析の結果、遺伝的に異なる2つのグループから構成されていることが示された。

以上の結果より、系統関係は地理的な位置を反映しておらず、現在の分布は人為的な要因が影響していることが示唆された。

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