| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P2-217

小笠原西島におけるクマネズミの根絶

*橋本琢磨(自然環境研究セ),藤田昌弘(自然環境研究セ),常田邦彦(自然環境研究セ),矢部辰男(ラットコントロールコンサルティング),牧野俊一(森林総研)

島嶼におけるネズミ類の生態系影響については、海鳥類、爬虫類、飛翔力の弱い昆虫類、希少植物の地域的絶滅など、幅広い対象に対して大きな被害を及ぼしていることが海外文献において示されている。最近になって、小笠原諸島でも海鳥類の卵や親鳥の捕食など、多くの被害が生じていることが明らかになってきた。そうした影響の排除の為には、ネズミを島嶼から根絶する技術の確立が必要である。そこで、小笠原諸島の西島を対象としてクマネズミの根絶を試みた。

西島は、父島の北西約1.8kmに位置し、面積49haの無人島である。駆除実施を前に、2005〜2006年にネズミ類のワナによる捕獲調査を実施し、生息種・食性・繁殖期の把握、生息個体数の推定などを行った。生息が確認されたのはクマネズミのみであった。繁殖は通年見られたが、1〜3月は稀であった。2006年4月時点の推定生息数はおよそ2,500頭であった。事前調査の結果を受け、個体数の低減期であり、餌資源が不足する時期であることから、2007年3〜4月に駆除を実行することを決定した。駆除の実行を前に、現地における合意形成を充分に行った。

駆除には殺鼠剤(ダイファシノン製剤)を使用した。陸生鳥類、オカヤドカリ類などの非標的動物への影響を最少化するために、殺鼠剤はベイトステーション(給餌器)を用いて散布した。

2007年4月と11月には、駆除作業後の根絶確認調査として、ワナによる捕獲調査、自動撮影調査、痕跡調査、夜間観察調査などを実施した。総計で3,000トラップナイト(のべワナ日)以上の捕獲調査を実施したが、ネズミ類は捕獲されなかった。その他の調査結果からも生息を示す証拠は得られておらず、西島のクマネズミは根絶したものと考えられる。

日本生態学会