| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P2-232

伊豆諸島八丈小島におけるノヤギ駆除事業開始後の植生回復状況

*上條隆志(筑波大生命環境),平田晶子(筑波大生命環境),川越みなみ,(筑波大生命環境),寺田千里(北大環境),仲山真希子(筑波大環境),濱甚吾(八丈町役場),菊池健(八丈ビジターセンター)

伊豆諸島八丈小島は、八丈島の西に位置する面積320ha、最高点617mの火山島である。1969年の全員離島以降、野生化したノヤギの個体数が増加し、その採食による植生の退行がみられるようになった。その一方で、八丈小島にはイタチなどの他の伊豆諸島で問題となっている移入生物が生息しておらず、伊豆諸島に特徴的な生態系が保持されている。八丈町はノヤギ駆除事業として、平成13年からノヤギの捕獲を開始し現在も継続して行っている。本研究は、ノヤギ駆除事業の植生回復への効果を検討するために、駆除事業開始前(1998年から2000年)と開始後の植生の比較を行った。

八丈小島のタブノキ群落、ヤブツバキ植林、チカラシバ群落などを対象として2006年10月に植物社会学的方法による植生調査を30地点行った。調査地へのアプローチが可能な場合には、過去の調査地点とほぼ同一地点で調査するように努めた。その結果、14地点の比較可能なデータを得ることができた。

駆除事業開始前と開始後を比較すると、森林群落では草本層の植被率が駆除後大きく増加していた。ヤブツバキ植林の3地点を例に挙げると、駆除授業開始前は草本層の植被率が5%未満であったのに対して、開始後は60%以上となった。種組成について比較すると、森林群落(8地点)では、ナチシケシダなどが新たに出現するようになり、草本群落(4地点)では、ガクアジサイ、オオシマカンスゲなどが出現するようになった。

以上のような変化は、ノヤギ駆除により採食圧が減少したために、生じた変化と考えられた。また、草本層植被率の増加やオオシマカンスゲなどの出現は、植生の回復傾向を示していると考えられた。

日本生態学会