| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P2-240

多摩川永田地区のハリエンジュ林の植生動態

*山口善子,星野義延(東京農工大・農)

多摩川中流域の永田地区でハリエンジュを中心とする河畔林の最近の約10年間の動態を把握することを目的に調査を行った。永田地区では1974年頃から河道の複断面化が進み、高水敷を中心に1985年〜1989年にハリエンジュの個体数が顕著に増加した。

永田地区の高水敷の5haの調査区で根元直径5cm以上の木本個体を対象に、2007年に毎木調査を行い、1996年の結果と比較した。また高水敷のハリエンジュ林の林縁部を含んだ調査区(28m×32m)で、稚樹も含めた毎木調査や下層の植生調査を2007年に行い、1997年、2000年の結果と比較した。

5haの調査区では、根元直径5cm以上のハリエンジュの個体数は1996年〜2007年に1.2倍に増加して2270本に、基底面積合計は2.2倍に増加した。根元直径のサイズ別にみると、根元直径が5〜10cmのクラスで個体数は減少したが、それより大きい全てのクラスでは個体数が増加していた。またハリエンジュ以外の木本個体数は1.9倍になり、樹種別にみるとエノキやサクラ属、ミズキなどの鳥散布の木本種が多く含まれていた。

高水敷のハリエンジュ林の詳細調査では、1997年〜2007年でハリエンジュの個体数(樹高1.3m以上)は1.3倍に増加したが、2000年〜2007年では個体数にほとんど変化はなかった。その他の木本個体数は1997年には4本(3.4%)であったが、2000年〜2007年に特に低木層でエノキやトキワサンザシが急増し、268本(35.7%)になった。1997年〜2007年にかけて下層植生では低木やアオツヅラフジなどのつる植物の被度が増加した。

永田地区の河畔林では依然としてハリエンジュが優占している。ハリエンジュの個体数の増加速度は低下傾向にあり、小さいサイズの新規加入の個体数は減少していた。

日本生態学会