| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P2-248

落下後の落葉は林床でどのように拡散するのか?

阿部俊夫(森林総研・北海道),坂本知己(森林総研),壁谷直記,萩野裕章,延廣竜彦,野口宏典,田中浩

川への落葉供給源となる範囲を解明するため、これまで落葉落下時の移動と林床での再移動について研究を行い、林床での移動については、落葉模型を用いた実験などをおこなってきた。本研究では、実際の樹木から落ちた葉の分布が、林床上でどう変化するかについて検討した。

調査は、小川群落保護林(茨城県)において周囲と樹種の異なるクリ個体(左岸・右岸斜面に各1、樹高は15mと18m)を用いておこなった。調査個体から斜面下方の3方向に放射状にリタートラップとコドラート(0.5m2)を5〜10m間隔で配置し、落葉量および林床の落葉分布を落葉期から翌年4月まで調査した。風速は各斜面上の高さ1.0mで計測した。

左岸側斜面では、落葉分布のピークは落葉時には根元から5〜10m付近にあったが、徐々に下方へ移動し、翌春では15m付近となった。この斜面は緩傾斜であるが、斜面下方への追い風となる傾向があり、主風向に近い方向ほど落葉分布も多かった。また、15〜30m付近に林床植生被度のやや高い箇所があり、再移動の障害になっていると考えられた。

右岸側斜面では、斜面下方の落葉数が徐々に増加する傾向は認められたものの、分布ピークの位置はほとんど変化しなかった。この斜面はより急傾斜であるが、向かい風となる傾向があった。また、落葉量の多い0〜10m付近に林床植生被度のやや高い箇所が多いことも、再移動が起こりにくい一因と考えられた。

翌春の落葉分布は、落葉時の移動と冬期の林床での再移動の両方の効果を含んでいるが、両斜面とも、大部分の落葉は調査個体から20m以内に留まっていた。樹種により違いもあるだろうが、かなり急斜面で追い風が吹くような条件でない限りは、これ以上遠方まで移動する葉は少ないものと推察された。

日本生態学会