| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P2-264

カバークロップ草地における草種構成と土壌養分の相互作用

*平田聡之, 荒木 肇(北大)

植生と土壌環境は相互に強く依存しあい、両者の関係が経時的に変化していくことが知られている。本報告では、圃場の生産力維持および春先の土壌養分の流亡の防止のため、カバークロップによる土壌養分の保持能力について検討した。カバークロップにはマメ科草本のヘアリーベッチとイネ科草本のエンバクを供し、土壌養分(特に無機態窒素)の動態に対する影響を2005年から2007年にわたり検討した。各年次とも、土壌内の無機態窒素量は、カバークロップ播種時(6月下旬)に最大値を示し、カバ-クロップ刈倒し時(8月下旬-9月上旬)にかけて減少し、その後、降雪直前(10月下旬)までやや増加した後、翌春の融雪直後(4月)に最低値を示した。異なる土壌養分量(N、P、K)に対する反応試験では、低窒素環境下でマメ科のヘアリーベッチの相対草量が増加する傾向が認められ、土壌内無機態窒素も増加する傾向が認められた(2005年)。混播条件では、ヘアリ-ベッチの播種割合が高いほど降雪直前の土壌内無機態窒素量が増加する傾向が認められたが、翌春の土壌内の無機態窒素の保持能力は、イネ科のエンバク単播または混播条件で高いことが明らかとなった(2006年)。これは、CN比の増加による土壌内窒素の無機化速度の抑制が関与していると考えられる。これまでの結果から、融雪による土壌養分の流亡が生じる積雪地域では、圃場の窒素養分の維持効果は、マメ科植物単独よりもイネ科・マメ科植物混合条件で高いと考えられた。また残渣のCN比は、それを利用する後代植物の養分要求量と要求時期に影響することが考えられ、土壌環境の動態にも強く影響することが示唆された。

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