| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P2-266

ササのないミズナラ林における土壌炭素動態

*小泉晋(筑波大・院・生命環境),南雲亮(筑波大・生物),里村多香美(北大・FSC),廣田充(筑波大・菅セ),鞠子茂(筑波大・院・生命環境)

炭素循環研究のスーパーサイトとして知られている岐阜大学高山試験地のミズナラ林はササ型林床をもち、これが生態系の炭素循環に重要な役割を果たしていることが明らかにされている。特に、ササが土壌炭素動態に与える影響については、生態系の炭素シーケストレーション機能の評価を考える上で極めて興味深い問題である。そこで、ほぼ同じ気候・林齢をもつ長野県菅平のササなしミズナラ林を比較対象として、ササの有無が土壌炭素動態にどのような影響があるのかどうかを検討するための研究を始めた。

50m×50mの調査枠を設け、毎木調査により地上部の現存量と年間生長量を、リタートラップで毎月の低木層から上部のリターフォール量を、地上に設置したリター枠で8月から11月の林床植物リターフォール量を、イングロースコア法で細根生長量・枯死量の季節変化を、エンジン式採土機で地下90cmまでの土壌の炭素含有率及び炭素量を、チャンバー法で4月から12月の土壌呼吸を測定した。

植物体地上部からの年間リターフォール量は2.8tCha-1であった(低木層より上部:2.78tC、林床植物:0.02tC)。これに地下部細根由来の年間枯死量0.15tCを加えると、土壌へ供給された総炭素量は2.95tCとなった。一方、土壌呼吸から推定された年間の従属栄養生物呼吸量は2.71tCであった。結果、ササのない菅平ミズナラ林土壌では、2007年に0.24tCの炭素が蓄積されたことが明らかとなった。この値はササ型林床をもつ高山ミズナラ林土壌よりも0.56tC小さかった。両地点の気候・林齢に差異がないことから、この違いはササの有無による可能性がある。この点について今後検討していく予定である。

日本生態学会