| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P2-273

岩手県・安比高原の草地における土壌CO2フラックスの空間依存性

*橋本徹, 三浦覚(森林総研)

生態系炭素循環における主要な経路の一つである土壌CO2フラックスは、根呼吸と土壌微生物呼吸とからなり,複雑な空間パターンを示す。土壌CO2フラックスは連続変量であり、地点間の距離が近いほど強く関係しあう。しかし、その程度やパターンは場所やスケールによって様々である。土壌CO2フラックスを面的に評価するためには、そのような空間依存性の定量とその機構解明が重要である。これまでの研究から、森林では、樹木の分布とそれに伴う根系の空間的不均一性が土壌CO2フラックスの空間パターンに影響していることがわかってきた。そのことから、逆に、地形が平坦で植物の空間的不均一性が少ないところでは土壌CO2フラックス空間依存性がないと予想される。そこで、本研究ではほぼ平坦な草原で土壌CO2フラックスの空間分布を測定した。

調査は、岩手県安比高原にある芝生・ワラビなどが優占する草原(通称「中の牧場」)で行った。緩斜面と平行に200mのラインを設定し、0.2m、1m、10m間隔でそれぞれ21個になるようにチャンバーを配置した。2005年の夏から秋にかけて、Li-cor社の携帯式土壌呼吸測定装置Li-820を用いて,密閉法により土壌CO2フラックスを4回測定した。土壌CO2フラックスの測定時に,チャンバーの近傍で地温と土壌体積含水率も測定した。

その結果、草地における土壌CO2フラックスの空間分布は測定回によって変化し、空間依存性も見られなかった。今回測定した空間スケールでは、芝生、ワラビなどの草本の根系分布はほぼ均一であると考えられる。植物の分布がほぼ均一であれば、土壌CO2フラックスに空間依存性が見られないということが明らかになった。

日本生態学会