| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P2-300

小笠原諸島の土壌における有効態リン酸の異常な蓄積

*森田沙綾香1,楠本良延1,加藤英寿2,岩崎亘典1,大東健太郎1,藤井義晴1,平舘俊太郎1(1農環研,2首都大学)

小笠原諸島は植物の固有種率が36.9%と非常に高い。しかし、現在、島外来植物の拡大が固有植物の生育を脅かし問題となっている。我々の研究から、北関東では植生の群落タイプは土壌の化学的特性と密接に関連していることが明らかとなっている。そこで本研究では、小笠原の父島、母島、兄島における土壌の化学的特性を調査し、植生に与える影響を考察した。

父島20地点、母島48地点、兄島12地点の表層土壌(0-5cm)を採取し、風乾後、pH(H2O)、pH(KCl)、pH(NaF)、電気伝導率(EC)、置換酸度、Bray II法による有効態リン酸、土壌中全炭素含量および全窒素含量を測定した。土壌中全炭素、全窒素、EC、pH(NaF)は父島、母島、兄島間で違いは見られなかったが、土壌pH(H2O)(父島:6.4±0.5、母島:6.1±2.0、兄島:6.6±1.1)、pH(KCl)(5.1±1.0、5.4±2.2、5.4±1.3)、置換酸度(1.3±1.3、49.2±49.2、2.1±2.1 mmol kg-1)、有効態リン酸(30.0±29.5、3493.2±3488.1、17.8±17.8 mg kg-1)では、母島は父島および兄島とは異なり、分散が大きかった。特に、有効態リン酸が多量に蓄積している地点が母島でのみ多数確認された。その値は、火山灰土壌において長期間リン酸を連用した畑土壌の値よりも数倍高いレベルにある地点もあった。この過剰ともいえる有効態リン酸の蓄積は、1)海鳥による糞の影響、2)施肥の影響、3)母材である岩石の影響などが考えられるが、現在のところ明らかになっていない。しかしこれらの過剰ともいえる有効態リン酸の蓄積は、小笠原の植生に大きな影響を与えていると推定される。

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