| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P2-301

植物バイオマスは草原の土壌呼吸に影響するか?

*鈴木あづさ(玉川大・院),関川清広(玉川大・農)

土壌呼吸(Rs)は、植物根呼吸(Rr)と従属栄養生物呼吸(Rh)の2つのコンポーネントからなり、これらは土壌炭素プールからの炭素放出を評価するために重要なパラメータである。それらのうち、土壌炭素プールからの炭素放出に直接かかわっているのはRhであり、その推定にはRsをコンポーネントごとに分けることが必要であるが、RrとRhの分離測定は技術的に困難である。草原においては森林よりも地下部バイオマスの直接採取が容易であり、バイオマスとRsの関係を明らかにするために適した実験系と考えられる。そこで本研究では、ススキ草原において植物バイオマスとRsの関係を明らかにすることを目的とした。調査は筑波大学長野県菅平高原実験センター内のススキ草原において、2006年5月〜2007年12月に月に1回の頻度で行われた(積雪期を除く)。地上部バイオマスの指標として携帯型測定器LAI-2000を用いてLAIを測定し(2006年のみ)、LI-6400を用いてRsを測定後にRs測定カラーごと土壌を採取して実験室に持ち帰り、植物体地下部の呼吸量を実験的に測定した後、乾燥してバイオマスを求めた(2006年8、10月、2007年6、8、10月)。本研究の手法ではRs活性には地温の影響が強く、LAI(地上部バイオマス)によるRsの差異は認められなかった。地下部バイオマスとRsの関係は、6月には不明瞭であった。8月には地下部バイオマスが少ないプロット間では両者の間に正の相関があり、地下部バイオマスが著しく多いプロット間ではRsはほぼ一定となった。10月には、両者の間には弱い正の相関が認められた。Rsの地下部バイオマスに対する依存性は、季節により変化することが示唆された。

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