| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P2-302

針広混交林の伐採による窒素循環撹乱機構の安定同位体比による解釈

*戸張賀史(東工大), 木庭啓介(農工大), 柴田英昭(北大), 豊田栄(東工大), 鈴木希実(東工大), 佐藤冬樹(北大), 吉田尚弘(東工大)

本発表では、硝酸中の窒素及び酸素安定同位体比を用いることにより、森林伐採に伴う窒素循環の撹乱機構の解釈を行うことを目的とする。

森林生態系は、施肥や伐採などの過剰な撹乱により硝酸態窒素を過剰に流出することや、亜酸化窒素(N2O)を放出することが広く知られている。だが、森林伐採によって森林生態系の環境がどのように変動し、その結果として窒素流出が起きN2Oの放出が起こるのか、その過程は詳細には解明されていない。硝酸中の安定同位体比は硝酸の起源及び反応仮定の履歴を保持していると考えられており、そのため、硝酸中窒素酸素安定同位体比を用いて森林生態系の窒素循環を解明しようという研究は数例行われてきている。しかし、現時点ではこれまでに森林伐採による窒素流出機構を、安定同位体比を用いて解釈を行う研究例は存在しない。

本研究は北海道大学北方生物圏フィールド科学センター雨竜研究林にて行われた。観測地は1994年に植林されたアカエゾマツを主とする複数の集水域と、クマザサが主である未更新地から構成されている。伐採実験は2006年の4月末から5月頭にかけて行われ、一部の集水域の伐採及びササ地の掻き起こしを行った。試料の採取は2005年夏から定期的に行っている。

測定の結果、森林伐採以後の硝酸濃度は伐採以前、また対象域と比較しても硝酸の流出は観測されず、また安定同位体比の変動も観測することができなかった。窒素同位体比の値が伐採の以前以後で変わらないということは、森林伐採による植物遺体の窒素インプットの有無に関わらず、窒素循環は影響を受けないということを示しており、原因及び他研究との比較検討が必要である。

日本生態学会