| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P2-306

森林

*藤井一至,植村真里,早川智恵,舟川晋也,小崎隆

上記の演題は「森林表層土壌の酸性度が溶存有機炭素下方浸透量を規定する」の誤りです。

【導入】

森林において、落葉によって土壌へ供給されたリターは分解され、大部分はCO2 へと無機化されるが、一部は溶存有機炭素(DOC)として溶液中へ放出され、下方浸透する。熱帯土壌では無機化速度が高く、DOC下方浸透量は低いと考えられてきたが、報告は少ない。温帯だけでなく熱帯地域を含めた森林において、林床からのDOC下方浸透量を測定し、その規定要因を解析した。

【方法】

日本、タイ、インドネシア計8地点の森林において林内雨によるDOCの下方浸透、リターフォールによる林床への炭素投入量を測定した。林床溶液によるDOC下方浸透量をライシメーターによって採取した。ともに毎月採取し、年間の炭素フラックスを求めた。また、林床中のリグニン分解酵素リグニンペルオキシターゼ(LiP)、マンガンペルオキシターゼ(MnP)の活性を測定した。

【結果・考察】

林床溶液によるDOC下方浸透量は、32-431 kg C ha-1 yr-1と幅広い値をとった。一方、炭素投入量は、1758-4600 kg C ha-1 yr-1であった。林床からのDOC下方浸透量は、炭素投入量に対して0.8-14.1 %に相当し、強酸性土壌(pH<4.5)で高かった。LiP活性は強酸性土壌で高く、MnP活性は弱酸性土壌で高かった。

強酸性土壌においては、白色腐朽菌のLiPによるリグニンの可溶化が活発となり、難分解性の芳香族化合物が放出され、DOC生成は高くなったと考えられた。一方,弱酸性土壌では、MnPによるリグニンの無機化が卓越し、DOC生成は低かったと考えられた。土壌酸性度の違いによるリグニン分解酵素の違いが、リグニンの可溶化、無機化割合に影響し、分解されたリターのDOCへの分配割合を規定していると考えられた。

日本生態学会