| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P3-029

植物硝酸同化のshoot/root比の解析

*1白井貴之,12蜂谷卓士,1寺島一郎,1野口航(1東大・院・理,2阪大・院・理)

植物では多くの場合、窒素は土壌から硝酸態として吸収され、還元されてアミノ酸へと同化される。同化されたアミノ酸は必要な器官へ転流され、タンパク質が合成される。硝酸からアミノ酸への同化反応はNR (nitrate reductase)、NiR(nitrite reductase)をはじめとする酵素によって触媒されている。この還元反応は非常に多くの還元力を消費するため、かなりの消費コストがかかると考えられている。NiR以降の反応は色素体内で行なわれるので、光照射下の光合成器官では、反応に必要な還元力とATPを光合成系から直接得ることができ、消費コストの面で有利である。しかし実際にはこれらの酵素は非光合成器官においても存在し、そこで硝酸が還元される場合がある。この硝酸還元の器官依存性は、種、環境条件、成長段階によって大きく異なる。この違いのもつ意味はまだ不明である。本研究では硝酸還元の場に関する定量的理解のためのモデル確立の前に、まず植物個体の各器官の硝酸還元量と同化された有機態窒素の転流量の詳細を調べることを目的とした。材料として水耕栽培したキク科ヒャクニチソウを用いた。NRはこの一連の反応の最初の酵素で、かつアミノ酸生成反応の律速過程であるため、ソース葉、シンク葉、根、茎におけるNR活性の日周変化を測定した。また同時に構成タンパク質量の時間変化を測定し、NR活性の積分値と構成タンパク質量増分の差から転流量を求めた。これらのデータをもとにして、それぞれの器官が有機態窒素をどの程度自立的に得ているか、また根をはじめとする非光合成器官で硝酸還元を行うメリットは何か、という問題について考察した。

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