| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P3-039

ブナの水利用様式の地理変異

立石麻紀子(九大・福岡演習林),熊谷朝臣(九大・宮崎演習林),陶山佳久(東北大・院・農),日浦勉(北大・苫小牧研究林)

ブナは北海道から鹿児島県まで広範囲に分布する落葉広葉樹であり、異なる気候条件に適応して形態的な変異を持つと考えられる。また、水分環境の違いに適応して地域的に異なる水利用を行っていることも考えられる。これらの検証のためには、単木レベルでの水利用様式を解明することが必要だが、日本各地での水利用を統一的な方法で調べた例はない。そこで、ブナの水利用様式の地理的な特性の違いを明らかにするために、北海道、宮城県、宮崎県の3箇所において、樹液流計測(Granier法)により単木水利用量とそのプロセスを調べた。

樹液流計測を用いて蒸散量を算出するためには、通水面積と樹液流速の空間変動の解明が不可欠である。グラニエ法に基づいた移動式樹液流計測センサーを用いて、樹液流速の放射方向変動を決定した。また、固定式センサーも設置し、樹幹周囲方向の変動も決定した。直径約40cmの対象木の樹液流速は0-2cmで最大、辺材深度につれて減少していき、最大14cmの深さまで確認された。小径木では0-2cmの最大樹液流速に対し、髄付近でも20パーセントの流速が認められ、樹幹断面積の全域で通道していることが明らかになった。この水分通道特性の傾向は3地点全てで確認され、地理的な差異は認められなかった。さらに、0-2cmの樹液流速から単木蒸散量を求める際、辺材面積と樹液流速の放射変動を考慮した蒸散量にするために算出する補正係数Cも、3地点の差は小さかった。従って、Cは胸高直径の関数で表せた。以上の結果を用いて算出される単木レベルの蒸散量と微気象要因とを合わせて、ブナの環境応答の考察も行う。

日本生態学会