| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P3-040

水の酸素安定同位体比から見た中国毛烏素沙地における植物の水利用様式

*小山晋平(京大・農), 松尾奈緒子(三重大・生物資源), 大手信人(東大・農), 隠岐健児, 小鹿耕平, 垣本大(三重大・生物資源), 王林和(内蒙古農業大), 吉川賢(岡大・農)

乾燥地における木本植物の水利用様式を明らかにするため,中国北部の半乾燥地において代表的な種の調査を進めている.近年, 蒸散に伴い葉内の水に同位体濃縮が起こることを利用して, 葉内水と茎内水の酸素安定同位体比(δ18O)から植物の蒸散特性を評価するモデルが提案されてきた(Farquhar & Lloyd 1993). このモデルの適用と検証を上記の乾燥地に生育する植物で行うため, ポロメーター(LI1600, Li-Cor)での気孔コンダクタンスの測定と併せて葉と枝を採集し, 葉内水と茎内水のδ18Oを測定した. また植物の吸水深度を推定するために, 地下水と表層から地下水面までの約6深度の土壌水を採集した. 土壌水, 茎内水, 葉内水は, バイアルに入れた土壌, 枝, 葉サンプルから真空蒸留法を用いて抽出した. 土壌水, 茎内水, 葉内水を同時に扱うことで, 植物体内での同位体濃縮の様子を明らかにする. 調査は2007年8月30日と9月2日に中国内蒙古自治区毛烏素沙地開発整治研究センタ−の図克で行った. 対象樹種は, ヒノキ科の臭柏(Sabina vulgaris), ヤナギ科の烏柳(Salix cheilophila), 沙柳(S. psammophila), 旱柳(S. matsudana), マメ科の檸条(Caragana korshinskii), キク科の油蒿(Artemisia ordosica)とした. 測定した葉内水の同位体濃縮(ΔLW)は日中変化し, 夜明け直後の値は0に近く, 日中増加し, 14時ごろをピークに減少する傾向が見られた. 測定した気孔コンダクタンスとΔLWの関係や, 上記モデルの適用と検証の結果を発表する.

日本生態学会