| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P3-041

温帯アカマツ林における分光反射特性の季節変動

*高梨聡(森林総研・気象), 溝口康子(森林総研・気象), 岡野通明(森林総研), 大谷義一(森林総研・気象), 岩田拓記(筑波大), 中井裕一郎(森林総研・気象)

地球温暖化問題に関心が高まっている現在、森林群落における二酸化炭素吸収量を推定するために様々なモデルが開発されている。その中で、葉面積や光合成に関するパラメータの季節変動特性に関してはモデル化が難しい。そこで、衛星などによるリモートセンシングデータから得ることのできる葉の透過・反射特性などを用いて推定し、非破壊かつ連続的にこれらのパラメータを取得できるようにする方法が試みられてきている。本研究では樹冠直上に設置された分光放射計を用いて葉面積と関連の深いNormarized Defference Vegetation Index(NDVI)とキサントフィルサイクルやPSIIと関連の深いPhotochemicalReflectance Index(PRI)を測定し、その季節変動特性と森林群落レベルでのCO2吸収特性との関連性を解析した。

観測は山梨県富士吉田市のアカマツ林(90年生、樹高約20m)において行われた。観測地周辺はコナラなどの落葉樹が一割程度含まれており、プラントキャノピーアナライザーで測定された葉面積は約3-5である。群落のCO2フラックスは渦相関法を用いて測定し、樹冠内のCO2濃度を測定することにより貯留変化量も考慮して群落レベルでのCO2吸収量を観測した。晴天日の11時から13時までのNDVIは4月の下旬に上昇し、6-8月はある程度安定した値をとり、9月の中旬に減少した。一方でPRIは3月頃から上昇し始め7月頃にピークを持つ季節変化をした。アカマツ林のCO2吸収量はNDVIよりもPRIと高い相関が見られ、晴天日の群落純生産量が葉量よりもPSIIの活性に規定されている可能性が示唆された。

日本生態学会