| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P3-053

葉の炭素・酸素安定同位体比を用いた乾燥地植物の耐乾性と耐塩性の評価

松尾奈緒子(三重大生物資源), 大手信人(東京大農学生命科学), 小山晋平(京都大農), 吉川賢(岡山大環境), 王林和(内蒙古農業大), 砂田憲吾(山梨大医学工学), エレーナ・シュイスカヤ(ロシア科学アカデミー), クリスティーナ・トデリッチ(ウズベキスタン科学アカデミー)

アジアに広がる乾燥地域では人為的要因による砂漠化の進行が問題となっており, 水収支と植物の特性に配慮した緑化や生態系の修復がもとめられている. そのため, 乾燥地植物の特性として重要である耐乾性や耐塩性を評価する簡便な手法が必要とされている. 環境条件が一定のとき, C3植物では水利用効率が大きいほど葉の炭素安定同位体比(d13C)が大きくなり, 気孔コンダクタンスが大きいほど葉の酸素安定同位体比(d18O)が小さくなることが理論・実験により示されている. そこで本研究では, 中国内蒙古自治区・毛烏素沙地(北緯39°東経109°)とウズベキスタン・キジルクム砂漠(北緯41°東経65°)の試験区に生育する植物を対象に葉のd13Cとd18Oの測定を行い, 耐乾性や耐塩性との関係を調べた. その結果, 対象植物は温帯や熱帯の植物よりも葉のd13C とd18Oがともに大きく, 葉のd13Cが大きい種ほどd18Oも大きかった. これより, 対象植物では水利用効率が大きい種, すなわち耐乾性の大きい種ほど気孔コンダクタンスを小さく保っていることがわかった. またキジルクム砂漠の塩分濃度の低い試験区から高い試験区にかけて分布している植物数種では, 塩分濃度の高い試験区の個体ほど葉のd13Cが大きかった. このことは, これらの種が水利用効率を上げることによって塩分濃度の高い環境に対応している可能性を示唆している.

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