| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P3-056

拡張big-leafモデルを用いた温帯ヒノキ林のガス交換特性の解析

*宗田智佳(京大・農),小杉緑子(京大・農),大久保晋治郎(京大・農)

森林のガス交換特性を理解するためには、気温やPAR、飽差などの環境要因との関係を見るだけではなく、光合成や蒸散などの植物の生理的な現象がフラックスにどのように影響しているか知ることが重要である。本研究では植物の生理的な解析も含めるために、フラックスデータから群落の応答を知ることが出来る拡張big-leafモデル(Kosugi et al, 2005, AgForMet)を用いて、群落を一枚の葉と見立てた場合の25度で標準化されたカルボキシル化最大速度(以下VCMAX25)と群落コンダクタンス(以下gc)を求めた。VCMAX25は群落の光合成能力を、gcは気孔の開き具合を示す。そしてCO2フラックスや潜熱フラックスと、VCMAX25やgc、飽差、土壌水分、PARの相関を調べた。

観測は桐生水文試験地(滋賀県大津市)の観測タワー(高さ28.5 m)で行った。優占樹種はヒノキで一部アカマツも混在している。タワーおよび周辺において2002年1月から2007年12月までの5年間にわたりCO2フラックス、潜熱フラックス、放射各成分、土壌水分、気温、PAR、飽差等を計測した。そしてこれらの値をもとにVCMAX25、およびgcを算定し、各要素の年変動や季節変動、相関を考察した。

gcは葉が褐色期となる冬季に下がり成熟期である秋季に最大となる変動を取った。VCMAX25は冬季に下がるがその他の季節的な変動はなかった。CO2フラックスおよび潜熱フラックスと、gcとVCMAX25、飽差、気温、土壌水分、PARの関係を見ると、CO2フラックスは群落の光合成能力の指標であるVCMAX25、潜熱フラックスは飽差と一番相関が高かった。このことから潜熱フラックスは環境要因の影響を、CO2フラックスは植物の生理現象の影響を多く受けることが分かった。

日本生態学会