| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P3-063

直達散乱分離をおこなった全天空写真の解析手法の検討

*宇都木玄,飛田博順,北岡哲,上村章,北尾光俊(森総研北海道)

野外での植物生理生態研究には光環境条件の解析が重要で、特に光合成に関しては光量絶対値の推定が必要である。この場合、対象となる植物に光センサーを設置できる場合を除き、特定の手法で光環境条件を推定することになる。全天空写真では簡便に散乱光レベルの光環境条件(開空度)が推定でき、現場での簡便さや解析プログラムの発達、機材の低価格化により、多くの研究で用いられている。全天空写真を用いた場合、全日快晴でかつ直達光と散乱光の比が常に一定であると仮定し、入射光量の絶対値を推定する。しかし現実には、測定場所や時刻、天候により直達光と散乱光の比率が変動する。この変動を全天空写真の解析結果に組み込んだ場合、通常の計算出力結果と大きな違いが生じるのであろうか?本研究ではフラックス観測タワー(40m)最上部で直達日射量(Ib)、全天日射量(Ig)を観測した。散乱日射量(Id)はIg-Ibと定義した。Ib及びIdを簡便に推定する手法を検討した結果、Erbsモデルが適当であった。同支所苗畑にある人工GAP内に植栽したカラマツ実生の直上で、全天空写真を撮影した。解析はSCANOPYを用い、5-10月について通常の写真解析をおこなった(PhC値)。またPhC値から5分間隔で直達光入射確率(0or1)及び散乱光入射確率の出力を得、タワー上で計測したIbとIdからカラマツ直上の直達・散乱光強度の再計算をおこなった(MeC値)。またErbsモデルで得られた直達・散乱光量から同様の計算をおこなった(ErC値)。全光のMeC値はPhC値の76%であった。PhC値は直達光成分を190%以上過大評価し、散乱光を60%近く過小評価した。MeC値とErC値はすべての関係でほぼ同一であった。従って植物の光環境の絶対値の推定は、全天空写真の解析結果にErbsモデルによる直散分離を併用することで可能になる。

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