| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P3-064

メヒルギ群落内における吸光係数の連続的垂直変化を考慮に入れた群落光合成の推定

*諏訪錬平 (琉球大学), Md. Nabiul Islam Khan (Khulna Univ.), 萩原秋男 (琉球大学)

沖縄島漫湖干潟のメヒルギ群落において、層別刈取法に基づき積算葉面積密度と相対光量子密度の垂直分布を明らかにした。積算葉面積密度の増加に伴う相対光量子密度の低下は指数関数によって表現されることが一般的である。この関数の指数は吸光係数と呼ばれており、葉の角度に強く依存する。しかしながら、本研究においては、従来の指数関数モデル(AICC = -2.25)よりはむしろ積算葉面積密度の増加に伴い吸光係数が上昇するモデル(AICC = -8.37)のほうが回帰モデルとして適していた。また、相対光量子密度の低下に伴い吸光係数はおよそ0.29から1.04へと変化することが明らかになった。このことは、相対光量子密度の低下に伴い葉の角度が減少して水平に近づくことを示唆している。また、群落光合成生産の観点から両モデルの比較を行った。年群落総光合成生産量および年葉群呼吸量は、個葉の光合成および呼吸特性の光環境への依存性と季節性を考慮に入れ、門司・佐伯の群落光合成理論を適用して推定された。結果として、年群落総光合成生産量および年剰余生産量は吸光係数を一定と仮定したモデルにおいて高い値が得られた。本研究結果は吸光係数の変化を考慮に入れることが必ずしも群落光合成生産の推定値の増大に繋がるわけではないことを示している。吸光係数の垂直変化は各個葉へ分配される光資源の均等化を促進する。個葉の特性が群落内で均一な場合、光資源が均等分配されると群落光合成生産は最大化する。しかしながら、実際の森林においては個葉の光合成および呼吸特性は光環境に依存して著しく変化することから、光資源の均等分配が群落光合成生産の増大に貢献するとは限らない。このことが、吸光係数を一定と仮定したモデルにおいて群落光合成生産が高く見積もられた理由として挙げられる。

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