| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P3-066

森林のバイオマス推定に必要な調査面積は?:幹断面積の平面分布の解析から

*齊藤哲,佐藤保(森林総研),小南陽亮(静岡大・教育),真鍋徹(北九州自・歴博),西村尚之(名古屋産業大・環境情報),永松大(鳥取大・地域)

森林のバイオマス等を調べる場合、小さなプロット内を精査した値を広域の推定値とする方法がよく採られている。その際、プロットの大きさは、労力と精度から経験的に決められることが多い。あるプロットサイズで広域を推定する場合、どの程度の誤差があるかを認識することは重要なことであるが、このことはあまり注意が払われていない。本報告では、プロットサイズのちがいによる推定値のばらつきを解析し、効率的なプロットサイズとその時の推定値の精度を定量的に示すことを目的とした。宮崎県綾町の照葉樹天然林に設置した200m四方(4ha)の全調査区域を、一辺がa(aは2、5、10、20、25、40、50、100)m四方の小区画に区切り、そこからランダムにn個の区画を選びその中の幹(胸高直径5cm以上)の胸高断面積合計の平均値Mi(a,n)を求めた(iはくり返し回数)。この作業を10000回繰返し、平均値M1(a,n)からM10000(a,n)のばらつきV(a,n)を算出した。まずそれぞれのaについて、総面積が一定(1ha)となるようnを調整し、V(a,n)を比較した。その結果、V(10,100)の値が最も小さかった。つぎにa=10とし、nを変化させた場合、nの増加とともにV(a,n)は減少するが、n=10前後で減少の仕方が鈍ってくる。以上の結果からa=10、n=10くらいが効率的な調査面積と判断した。その時、推定値の95%が推定誤差42%の範囲内となる精度であった。これらの値は幹の分布の偏り方によっても異なるが、天然林においてはおおよそこのくらいの値に落ち着くと考えられた。

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