| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P3-092

花はどれだけおいしいか?:花食害と窒素濃度の関係

*小黒 芳生(東北大・院・生命),酒井 聡樹(東北大・院・生命)

ヒメシャガの花は、つぼみから果実が成熟するまでの間、蛾の幼虫などによる食害を受ける。なぜ、果実や種子だけでなくつぼみや花も食べるのだろうか?その理由のひとつはつぼみや花が窒素を多く含むことではないかと考え、窒素量の解析を行った。

2006年の5月中旬から7月下旬にかけ、宮城県仙台市の青葉山の2地点でヒメシャガの花を(1)つぼみの出現時、(2)開花時、(3)開花から25日後、(4)果実の成熟時にサンプリングした。また、比較のため、花をサンプリングした個体の葉も8月にサンプリングした。サンプリングした花と葉は乾燥機で乾燥させ、Vario EL III(Elementar Analysensysteme)を用いて乾燥重量あたりの窒素濃度を測定した。開花から25日後の果実と成熟した果実は、果実と種子とに分けて測定した。

窒素濃度はつぼみの出現時が最も高く、開花時はそれよりも下がっていた。開花から25日後の果実の窒素濃度は開花時と同じくらいで、種子の窒素濃度はつぼみ出現時よりも少し低く、開花時より高かった。成熟した果実の窒素濃度は最も低く、種子の窒素濃度は開花から25日後とほとんど変わらなかった。つぼみ出現時・開花時・開花から25日後の種子・成熟した種子の窒素濃度は葉の窒素濃度よりも高かった。

この結果から、ヒメシャガでは、花は葉より多くの窒素を含むこと、つぼみは葉や種子よりも多くの窒素を含むことが明らかになった。窒素を多く含むことが、ヒメシャガの花が食害を受けやすいことの理由のひとつかもしれない。なぜ幼虫が花を食べるかを明らかにするためには、今後、含まれる防御物質の量などを調べる必要があるだろう。

日本生態学会