| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P3-115

採食行動の異なる果実食・種子食鳥はどのような果実を利用するのか?:文献データによる分析

*吉川徹朗(京大院・農), 井鷺裕司(京大院・農), 菊沢喜八郎(石川県立大)

鳥散布果実を利用する鳥類のなかには採食様式のあり方に大きな変異がある。日本に生息する鳥類は、果実に対する採食様式によって大きく4タイプに分けられる。1)果実を丸呑みする“呑みこみ型”は植物の主要な種子散布者と考えられる。一方、2)体内で種子をすり潰す“すり潰し型”、3)嘴で種子をつぶして食べる“つぶし型”、4)嘴で種子をつついて食べる“つつき型”のタイプの鳥類は種子捕食者と考えられる。このように、採食様式はその鳥の種子散布者としての貢献度のキーとなる要素であるが、これまであまり注目されてこなかった。本研究は、採食様式の違いが鳥類の果実利用パターンに及ぼす影響の解明を目的として、4タイプ14種の鳥類の採食果実とその形質を文献データにより調査し比較した。またロジスティック回帰分析により各鳥における果実選択の決定要因を分析した。

その結果、採食タイプ間で果実の利用パターンに大きな差があることが明らかになった。呑みこみ型・すり潰し型の鳥類が多くの種類の果実を利用していたのに対して、つぶし型・つつき型の鳥が利用する果実は少数の種類にとどまった。また採食果実の形質を比較すると、つぶし型・つつき型の鳥では、呑みこみ型・すり潰し型に比べて採食果実の形質に偏りが認められた。また、つぶし型・つつき型の多くの果実選択は果肉タイプなどの形質に基づいていることが明らかになった。つぶし型・つつき型の種では、採食時に果肉や種子の処理に時間と労力を要するために、特定の形質を持った果実への採食の偏りが見られるものと考えられる。このことから、果実を利用する鳥類における採食行動の違いが、利用する果実の幅とその形質を規定していることが示唆された。

日本生態学会