| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P3-123

ヒノキ巻き枯らし木における穿孔性昆虫の飛来と発生

*稲田哲治(愛媛県・林技セ),宮田弘明(高知県・森技セ)

スギ・ヒノキ人工林における巻き枯らしによる間伐施業は,従来の伐り捨て間伐に比べて低コストで作業が安全であり,残存木への環境変化が緩やかであることなどにより,近年,注目されている。しかし,巻き枯らし木は伐倒木に比べて衰弱期間が不均一で長いため,多数の林業害虫が発生することが考えられる。このため我々は,巻き枯らし木と伐倒木の間における穿孔性昆虫の飛来や発生の違い,巻き枯らし時季の影響について調査した。

試験地は,愛媛県久万高原町の25年生ヒノキ人工林(標高550m)と高知県香美市の39年生ヒノキ人工林(標高450m)とした。巻き枯らしおよび伐倒処理は,愛媛県では2005年3月(巻き枯らし48本,伐倒48本),高知県では2005年4月(巻き枯らし40本,伐倒20本)におこなった。高知県では巻き枯らしを2005年7月(20本)と9月(20本)にもおこなった。飛来昆虫は,処理当年の2005年,1年後の2006年,2年後の2007年の各年3〜10月に巻き枯らし木,伐倒木,無処理木の各6本に粘着紙を装着して調査した。発生昆虫は,処理1年後の2006年,処理2年後の2007年の各年3月に巻き枯らし木(愛媛県各年12本,高知県各20本)と伐倒木(愛媛県各年12本,高知県は2006年20本)を網室に持ち込み,各年3〜10月に調査した。飛来・発生した主要な穿孔性昆虫類は,キバチ類,キクイムシ類,ヒメスギカミキリ,マスダクロホシタマムシ,キイロホソナガクチキムシおよびこれらの捕食寄生昆虫であった。今回の発表では,巻き枯らし処理から2年後までにおける穿孔性昆虫の飛来と発生の推移,伐倒木との比較,処理時季による違いを示し,巻き枯らし施業に伴う林業害虫の発生リスクについて考察する。

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