| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P3-131

土壌微生物と植食性昆虫の相互作用

*上田紘司,安田弘法,俵谷圭太郎,村山秀樹,佐藤智,西澤隆,村山哲也,豊増知伸

植食性昆虫の個体数を決定する要因には、天敵、植物の形態あるいは食害による植物の形質変化が重要な役割を担っていることが示されてきた。土壌微生物のアーバスキュラー菌根菌(AM菌)は多くの植物と共生し、リン酸などの無機養分の吸収を促進し植物の生育を改善する糸状菌である。これまで、このAM菌が植食者のパフォーマンスに及ぼす影響について研究されたが、AM菌が植食性昆虫の食害による植物の形質変化を介した昆虫の種間相互作用に及ぼす影響を明らかにした研究はない。そこでダイズを用いAM菌Gigaspora margaritaがハスモンヨトウの摂食を通して植食者とその天敵の個体数に及ぼす影響を明らかにする目的で、AM菌の有無とハスモンヨトウ幼虫摂食の有無の2×2の要因実験で、これらの要因が昆虫の個体数に及ぼす影響を調査した。

その結果、AM菌を接種していない非接種区に比べAM菌を接種したAM菌区のダイズの葉数と現存量が食害の有無に関わらず増加した。アザミウマとアブラムシの個体数は健全株の非接種区よりAM菌区で増加したが、食害株のAM菌区では健全株ほどの増加が見られなかった。一方、これらの天敵の個体数は植食者の個体数に同調していた。これらの結果などから、土壌微生物とハスモンヨトウ幼虫の摂食がダイズ上の植食性昆虫とそれらの捕食者の個体数に及ぼす影響を植物の発育や体内成分への影響も含めて考察する。

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