| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P3-137

ゴール形成に誘導されるヤナギの二次生長の個体内・個体間変異

*倉地 耕平, 大串 隆之(京大・生態学研究センター)

[背景] 食害に誘導された植物の形質の変化は植食性昆虫の適応度や個体数、相互作用に大きな影響を与える可能性が指摘されている。一方、植物の形質変化の大きさは、様々な要因に影響を受ける。中でも植物個体による変異は、食害ストレスに対する表現型可塑性としての形質の変化を理解する上できわめて重要である。さらに、形質変化を誘導する植食者による局所的な影響もまた、形質変化の大きさに変異を生み出すかもしれない。

ヤナギの当年シュートにヤナギマルタマバエのゴールができると、その周囲から新たなシュートが伸長することが知られている(Nakamura et al. 2003)。そこで、本研究では植食者が誘導する植物の形質変化の大きさに個体変異があるか、あるとすればどのような要因が重要なのかを明らかにするために、ゴール形成に誘導されるヤナギの二次生長反応が、(1) 植物個体によって異なるのか? (2) ゴール形成者の生死によって影響を受けるか? を調べた。

[材料・方法] 滋賀県南東部の野洲川の河川敷に生育しているコゴメヤナギの群落から樹高約2m〜4mのヤナギ9本を調査木としてランダムに選んだ(個体間の距離は50m以内)。そして、二次生長の指標として、ゴールが形成された当年枝から伸長してきた側枝の数と長さを記録した。さらに、ゴール形成後の6月末にゴール内のタマバエ幼虫を殺し、その後の、ゴールの直径および側枝の数と長さをコントロールと比較した。調査は7月から9月末まで月1回実施した。

[結果] 側枝の数と長さの個体間の変異は個体内の変異に比べて有意に大きかった。また、二次生長の大きさはシュートの基部直径と有意な正の相関があった。一方、タマバエ幼虫の生死による二次生長の大きさへの影響はみとめられなかった。これらの結果から、二次生長の大きさの個体間変異を生み出す要因について考察する。

日本生態学会