| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P3-140

イノシシによる土壌撹乱が実生発生に与える影響

高橋一秋(長野大・環境ツーリズム),鷲谷いづみ(東京大院・農学生命)

イノシシは近年、農作物に被害をもたらす有害獣として駆除される対象になっているが、多様な生物間相互作用の結果として維持されている森林生態系へのイノシシによる関与を理解することは、森林生態系の保全を考えるうえで重要である。本研究では、イノシシが林床の土壌動物を採食する際に起こる土壌表面の撹乱が土壌埋土種子の発芽に影響を与えるかどうかを明らかにするために、イノシシによる土壌撹乱を受けた林床で発生する実生のモニタリング調査を行った。

調査は2005年の初夏から秋にかけて、長野県軽井沢町のコナラ・ミズナラが優占する落葉広葉樹林で行った。イノシシの掘り返しによる土壌撹乱を受けた場所(イノシシ区)と、土壌撹乱を受けていない場所(対照区)に0.5m×0.5mの植生調査枠を20個ずつ設置し、出現する実生の生残を継続的に調査した。また、調査期間中に土壌撹乱を再び受けたかどうかも調査した。

調査期間中に出現した実生は、イノシシ区で42種、対照区で17種であった。また、調査終了時に生残していた実生はイノシシ区で19種、対照区で7種だった。出現した実生の個体数および種数は、調査期間を通じて対照区よりもイノシシ区で多かった。出現した実生を種子散布様式で分類し、個体数と種数を比較したところ、貯食、アリ、付着、風散布においては有意な差は認められなかったが、被食と重力散布では対照区よりもイノシシ区で多かった。両区とも、イノシシによる再度の踏みつけと掘り返しを受けたが、対照区ではリターの除去は起こらなかった。

以上の結果から、イノシシによる土壌表面の掘り返しとリター除去は埋土種子の発芽を促進させることが示唆された。また、イノシシ区で出現した実生の一部は、イノシシによる踏み付けや掘り返しによって死亡したと推測された。

日本生態学会