| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P3-176

1+1>2?河川の合流点で種多様性が増加する

大澤剛士*(神戸大・院),三橋弘宗(兵庫県立人と自然の博物館),丑丸敦史(神戸大)

河川生態系は、一般的に上流から下流へと重力に沿った水の流れによって、連続的に物理環境が変化する。流量や河床材料はもちろん、水温や水質、河原の礫サイズも流域規模に沿って連続的に変化する場合が多い。しかし、厳密にみると河川環境は、複数河川の合流点において急激に変化している。例えば、下流部でも急峻な渓流が合流していた場合には、大きな石礫や急流が流れ込むことで局所的に異質な微環境が形成され、多様な環境がモザイク状に成立すると予想される。その結果、例えば上流域だけに生息可能な種が、合流点があることで生育可能域が拡がり、多様性を向上させている可能性がある。本研究では、河川に生育する草本を対象として、仮説の実証を試みた。

調査は兵庫県武庫川水系の11箇所の合流点において実施した。方法は、合流の前後の自然河原において、ベルトトランセクトによる植生調査を行い、種多様性と群集組成を比較した。その結果、合流後では、合流前に比べて種数、多様度指数が増加していた。さらに自然裸地面積も大きかった。群集組成の類似度は、合流点を挟んだ組み合わせで高く、物理距離が近い地点間であっても、合流点を挟まない場合は低い値を示した。この現象を説明するプロセスは、合流後に裸地という移入可能な生育場所が拡がることで、多くの種が定着可能となっていることと考えられ、その結果として高い多様性を示していると推測された。

以上の結果から、1)合流後は、種多様性が高いこと2)合流によって群集組成が一変するのではなく、周辺で出現する種を包含することで、種多様性を高めていることが考えられた。おおむね仮説は支持され、河川の合流点は、生物の生育可能域を拡げ、多様性を高めているという示唆が得られた。

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