| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P3-200

中規模撹乱仮説を拡張する:促進作用と競争のバランスによって中規模撹乱下の種の共存を説明できるか?

*岡安智生, 佐々木雄大, 大久保悟(東大・農), Undarmaa Jamsran(モンゴル国立農業大学), 大黒俊哉, 武内和彦(東大・農)

既往の中規模撹乱仮説(IDH)のメカニズムの説明はすべて、適切な撹乱耐性の下での競争優位種と撹乱耐性種の安定的な共存についての議論という点で一致している。一方、モンゴル国の草原の様々な環境における放牧傾度によってIDHを検証した結果、先述の説明とは違い、競争優位種と随伴種の共存により、中規模撹乱下で種多様性が増加していた。

本研究ではその説明として、促進作用に着目した。促進作用も中程度の環境の厳しさで最大の影響をもたらし、種多様性の増加を促すと予測されている。しかし上記の説明は概念モデルに留まり、一貫した系でそれが起こりうるかはほとんど確認されていない。本研究は、モンゴルでの調査の結果を例にとり、競争優位種・随伴種・撹乱体制種の三種の競争と促進を表す個体群動態モデルを用いて、中規模撹乱下で競争優位種と随伴種の共存の可能性と、 それはどのような競争と促進作用のバランスから起こるかを検証した。

その結果、フィールド調査に整合的な解を得ることが出来た。強放牧下では促進作用の急減に対して競争優位種の生産量の減少は緩く、結果として競争排除が起こったと示唆された。 弱放牧下では、促進作用自体は高いが、その増加率が減少(〜促進作用の飽和)したことに対して、競争の影響は継続して増加したことにより、競争排除が起きたと考えられた。このように種の共存の領域は、促進作用が最大になる領域とは一致せず、競争・促進作用の度合い自体だけでなく、それぞれの変化率が共存に強い影響をあたえることが示唆された。これらの知見は、既往の理論に対して、抽象的に言われてきた促進作用と競争の「重要度」の起源についての説明を与えるものである。

日本生態学会