| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P3-229

魚類の代謝量の個体発生的変化・・トラフグ型の代謝スケーリングは他の魚種でも認められるのか?

*八木光晴, 谷口和希, 福島正豊, 鬼倉徳雄, 及川 信 (九大・農・水実)

生物の単位体重当り代謝量M/Wと体重Wの関係はM/W=aWb-1で表される。この関係には種間(phylogeny of metabolism)と種内(ontogeny of metabolism)の関係があるが、この二者は区別して考えなければならない。後者の生活史初期におけるこの関係は小卵多産戦略をとる魚類や海産無脊椎動物では良く分かっていなかった。我々はこれまでトラフグで生活史初期の成長に伴うM/Wの変化は、b-1の値が等しい複相のallometry式で表されること、さらにM/Wの変化と共食い行動による生残率の変化が同調して生じていることを明らかにした。

本研究は上記の発見を受けて、マサバ、アオギスなどを対象にrespirometryを行い「トラフグ型の代謝スケーリング」が他の魚種でも認められるのかどうかを検証した。生きた魚の酸素消費量を発育段階に応じて止水式あるいは半止水式、また細切した魚の酸素消費量をTaiyo O2 uptesterで測定した。

その結果、いずれの魚種でもM/W(O2 μl g-1 min-1)とW(g)の関係は複数のM/W=aiWb-1で表され、b-1の値はどの相でも等しかった。すなわち、生活史初期の代謝量の個体発生は、魚が特定の体重付近まで成長するとM/W=aiWb-1におけるb-1の値が変化しないままai値が上昇する、という点でトラフグのそれと極めて類似していた。

以上の結果は、トラフグ型の代謝スケーリングが多くの種に認められる可能性を示唆すると同時に、この現象には脊椎動物の中で最も小さい体サイズで生まれ、最も繁栄したグループである魚類の「大きくなること」と「生き残り」の秘密が隠されていると考えられる。

日本生態学会