| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P3-233

釧路湿原に生息するイタチ科哺乳類の季節による食性の違い−アメリカミンクとエゾクロテン−

*竹下毅,立澤史郎,池田透(北大・院・文),嶋谷ゆかり(北大・院・理),増田隆一(北大・創成研)

本研究では,釧路湿原に生息するアメリカミンク(Mustela vison:以下ミンク)とエゾクロテン(Martes zibellina brachyura:以下クロテン)の季節別の食性の解明および土地環境による利用度の違いを明らかにすることを試みた

研究は1)糞サンプルの採取,2)DNA分析による種判定,3)糞内容物分析の手順で行った.採取された645個の糞のうち,ミンクと判定された糞は113個,クロテンと判定された糞は171個であった.糞内容物分析から類別の検出頻度を求めた結果,ミンクの20%以上の糞から哺乳類,両生類,甲殻類,昆虫類が検出された.これに対し,クロテンの糞の約半数から哺乳類,植物の種子が検出されたが,それ以外の分類群はほとんど検出されなかった.よって,ミンクは多様な生物を餌資源としていること,クロテンは哺乳類,植物の果実を主要な餌資源にしていることが推測された.

ミンクの糞採取率は春季,夏季で高く,秋季,冬季はクロテンの糞採取率が高い傾向が見られた.土地環境の利用度を明らかにするために,植生や地形から4つの土地類型に分類し,各土地類型で採取された糞数から土地類型の利用度を求めた.ミンクは湿原全体を一様に利用している傾向が見られたのに対し,クロテンはハンノキ林の利用度が高いが,川原や低層湿原は利用度が低い傾向が見られた.

餌資源の検出頻度と土地類型利用度から、様々な生物を餌資源とするミンクは湿原内を広く利用するが,クロテンは餌を得ることができるハンノキ林以外は,あまり利用しないことが考えられた.乾燥化の進んでいない湿原に生息する生物にとって,ミンクはこれまで存在していなかった新たな捕食者となり,ミンクが釧路湿原の生態系に与える影響は極めて高いことが推測された.

日本生態学会