| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P3-245

周期変動するマイワシとカタクチイワシの生活史の変化

*勝川木綿(東大・海洋研),渡邊良朗(東大・海洋研)

マイワシ(Sardinops melanostictus)とカタクチイワシ(Engraulis japoncus)は黒潮親潮域に分布し、重要な魚類資源として利用されている。マイワシはふ化後2年で体長15〜20cmに達し、2〜4月に産卵する。カタクチイワシはふ化後1年で8cmに達した後、成熟する。産卵は冬季を除いて周年である。これらイワシ類の資源量は数十年周期で大きく変動し、異なる時期に高水準期を迎える。マイワシの漁獲量は1965年には1万トン足らずであったが、1988年には史上最高の572万トンに達した。その後激減して1998年には最高時の漁獲量は19万トンとなった。2005年の漁獲量は3万トンで、最高時(1988年の572万トン)の0.5%と著しい低水準となっている。一方、カタクチイワシの漁獲量は、マイワシが急増した1970年代には減少に転じて1980年代は20万トン前後で推移した。マイワシ資源量が激減した1990年代には増加し、2003年の漁獲量は41万トンに達している。

これまで資源量に対応して成長速度や成熟サイズが変化することは知られていたが、断片的な知見にとどまっている。本研究では、1960年代から近年までの時系列データを解析し、資源水準に対応して生活史特性がどのように変化したかを明らかにし、生活史特性が決定されるメカニズムを考察する。また、これらの生活史特性の変化が個体群動態へどのような影響を与えるのか議論する予定である。

日本生態学会